お知らせ

2023.05.15

園児虐待(不適切保育)について【再】

また、園児虐待(不適切保育)の報道がありましたね。
保護者の皆さまも、不安を感じていらっしゃることと思います。

虐待には様々な理由や背景が考えられますし、私自身、我が身を振り返ってみれば虐待につながる要素を自身の中にも認めることができます。

親鸞さまの御教えは、私たちは「良い人だから」人を傷つけないのではなく、また「悪い人だから」人を傷つけるのでもなく、どんな人も、条件さえ揃えばいつでも、人をひどく傷つけることができる、そういう存在なのだということを教えてくださいます。

子どもの姿や育ち、背景を見ずに、「教育の名のもとに自分勝手な正義を押し付ける」等、振り返ればドキッとするようなこと、たくさんあります。
給食であれば「完食が正義」、ついそう考えてしまうこともあります。
「いのちをいただいているんだよ」「給食を作ってくださった方はどう思うかな?」こういった言葉は、ときに「反論が許されない脅し」になることもあります。
そして何より反省しなくてはならないことは、先生と園児の間には圧倒的な力の差があり、子どもは先生の支配下で言う通りにする以外、選択肢が与えられていないという場合がある、ということだと思います。

ですから「虐待や不適切保育している園があるんだね~、最低だね~」のように他人事としてではなく、この事件で改めて「自分たちはどうだろう?」と振り返り、自分たち自身と真正面から向き合う機会としたいと思います。

何より、理由はどうであれ、虐待や不適切保育は決して許されるものではありません。
戦争が肯定されることのないように、虐待や不適切保育が擁護されることは、絶対に絶対に絶対にあってはならないのです。

ここで以前に、他の事件に関して書かせていただいた記事を改めて掲載させていただきます。

「大変悲しく残念な事件ではありますし、同じように乳幼児に関わる私たちとしては強い怒りを感じていますが、報道されていることがすべてなのか、どこまでが本当のことなのか、誤解を招くニュアンスで報道されていないか…等、まだまだあきらかになっていないこともあるかも知れません。
私たちとしては、感情的になるのを少し抑えて今後の事件の動向を冷静に見守っていきたいと思います。

高田幼稚園では、虐待についてはこれまで職員間で定期的に話題にしてきました。

園で虐待が起こる背景にあるのは、大きく3つの要因が考えられます。
①職場環境(労働条件や人間関係等)により、職員に強いストレスがかかっている場合。
そういった場合、弱い存在とされている子どもにその矛先が向く可能性が大きい。
②職員に芽生える正義感や義務感、責任感等により、「先生(大人)のするべき事」が優先され、子どもの側に立つ姿勢、子どもの声を聞く姿勢が蔑ろにされている場合。
正義感等の感情は、一般的には「正しい心」として評価されますが、使い方を間違えると相手を深く傷つける場合がある。
「この子を何時何時までにちゃんとさせないと…」「進級までにちゃんとさせないと…」等の感情。
また「私はこんなに一生懸命にやっているのに、なぜ言うことを聞いてくれないの…」等の感情。
本来の保育の目的ではなく、「ちゃんとしつける」「ちゃんとさせる」ことが目的になっている場合がある。
そして、「しつけ」の名の元に、支配する側(大人)と支配される側(子ども)という関係性が構築されてしまい、それが日常化していく。(当たり前のこととして認識されていく)
③園が幼稚園教諭や保育士を雇用してから、園内研修やフォローアップが十分になされていない。
また、特に管理職が現場の状況を知らない、見ていない、知ろうとしない。
その原因としては、管理職が現場に対して無関心であったり、現場との衝突を避けるためあえて関与しない等、園よって様々な事情が考えられる。

考えれば、他にも要因となるものはまだまだあるでしょう。
高田幼稚園では、今後も①~③を中心に自園の分析を徹底して行い、虐待につながらない保育環境・職場環境づくりに努めます。

最後に、静岡県の保育士3人による園児虐待のニュースが報道される少し前に、高田幼稚園の職員間で共有した文章を掲載します。

【園児への虐待について】
いつも皆さんにはお伝えしているように、私たちの仕事は「密室性」が非常に高いです。
園児が登園した後、保護者さんは園児の様子を見ることができません。
私たちが園児に対しどのような行いをしても、保護者さんに伝わることはありません。
例え子どもたちから伝わったとしても、「そういった事実はない」と言い切ることも可能です。

我々の仕事の価値は、「誰も見ていないところでも、教諭として(保育者として)子どもの手本となる振る舞いができる」かどうかで決まります。
技術や理論も大切ですが、一番ではありません。
一番大切なのは人間性です。
「子どもと向き合う仕事」は、「人と向き合う仕事」。
「いのちと向き合う仕事」。
相手(園児や保護者、職員同士)に敬意を持って接し、一人の人間(いのち)として尊重することができる人間性が求められます。
この世には誰一人、支配されて良い人間はいないはずです。

虐待(いじめなども)は、すればするほどハードルが下がり、日常化し、最後には癖になります。
虐待に至る背景はそれぞれにあり、それぞれに理由があることでしょう。
それはそれでケアされていかなくてはならないのですが、例えどんな理由があろうとも、虐待が肯定される理由はありません。
虐待は、決して許されることではありません。

他人事ではなく当事者意識を持って我が身を振り返り、自分の行動の中に虐待につながる要素がないか日々チェックしましょう。
心が苦しいときには職員同士お互いに声をかけ合い、労わり合える職場環境を作っていきましょう。」

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