園だより
2020.08.27
「自分自身の問い」として
新型コロナウイルス感染症に関する差別・偏見の防止に向けて、文部科学大臣がメッセージを発表しました。
添付のPDFファイルをぜひご覧ください。
(ファイルは4つあります)
先日、津市教育委員会より各小学校を通して、保護者宛にメッセージが送られてきました。
タイトルは「新型コロナウイルス感染症に伴う差別的な行為や誹謗中傷の防止について(お願い)」とありますが、その中に気になる文言が入っていました。
それは、「悪いのは❝人❞ではなく、❝ウイルス❞なのです」という文言です。
私はどうにも納得がいかず、早速、教育委員会に抗議をし、撤回を求めました。
教育委員会の回答は、「依然として差別的な行為が続き、感染された方々が苦しむ現状をなんとかしないと、このままではたくさんの方々が傷ついてしまうとの思いが強かったことから、こういった表現を使った」とのこと。
言いたいことは、よく分かるんです。
それ以外の意図や含みもなく、真っすぐに取り組んでくださっていることも、分かるんです。
個人の意見としてであれば、皆さんそれぞれのお考えがあることでしょう。
私にそれぞれの意見を否定したり、抗議したりする気持ちはありません。
しかし、教育委員会の名前で出されたメッセージです。
しかも、この考えのもとに「学校の教職員と保護者が一体となって行動」(文中)するよう求められていることに対して、私はやはり納得ができません。
「差別や誹謗中傷は、絶対にしてはいけない」と言う一方で、悪いのはウイルスなのだから、と。
もちろん、私も差別や偏見には断固反対です。
そして、ウイルスがとても怖いです。
しかし、差別や誹謗中傷をしているのはウイルスではありません。
「私」という人間です。
自分の胸に手をあてて考えてみれば、私の中に、少なからずそういった気持ちが存在していることが分かります。
それが「私」の現実です。
だからこそ、「皆さん、してはいけません」の前にまず、「自分はしていないのだろうか?」と自分自身を省みることが大切だと思いますし、そこが出発点になるのだと思います。
その上で、「私ならどう行動するか」「私はどうするか」「私はどう生きるか」を自分自身に問う。
何回も何回も問い続ける。
これは「誰が悪いか?」という問題ではなく、私たち自身、一人ひとりの問題だと思うのです。
私は幼稚園の子どもたちに、そういう視点から「差別やいじめをしない」ことを伝えたいと思っています。
誰かを、何かを悪者にした上で「してはいけない」とは伝えたくない。
世の中にある様々なことを「自分自身の問い」として生きていきたいですし、子どもたちにそういう生き方を見てほしい。
それが私の覚悟と願いです。
「悪いのは❝人❞ではなく、❝ウイルス❞なのです」
❝人❞と❝ウイルス❞の部分を様々な言葉に替えて、我々は差別やいじめ、戦争を繰り返してきたのではないでしょうか。
今回、撤回には応じていただけませんでしたが、このことはこれからも大切に考え続けたいと思います。